『 　 』　2005年11月号

あっ、という間に夏は過ぎ去り、戸隠のお山は秋色に化粧をされている。

家の一歩外をさ迷い歩けばオレンジ色の巨大な南瓜をあちこちで見かけた。

中には顔型にくりぬかれ、ハロウィンらしく飾られたものも目にした。

ハロウィンを詳しくは知らない私だが、「日本で言うところの、お盆のようなものよ」と耳にしたことがある。　ともかくその言葉の響きから楽しそうで、ワクワクする気分になる。

「これ描かない？」とある日、見せられたのは大中小の種類の異なった南瓜だった。しかし、残念なことに"描きたい"というスイッチはONにはならず…。

南瓜を眺めながら、友と喋りながらお茶をすすり、あられをポリポリ食べていると、脳裏に浮かんだのは「あられも旨いが、寒くなるとお茶うけも暖かいものが欲しいな、南瓜なら、いとこ煮や甘辛煮が良いな。いや、やっぱり、母ちゃんが作る煮っ転がしかな、豚肉が一寸入っていたら　もう　最高なんだよね…」というものだった。

気づけば、勝手に足は動き、落書きのように「にっころがし」の絵足紙を描き上げていた。

我が母の煮物は美味しい(慣れているとも言える)。中でも大根を分厚く切って、甘さ控えめに炊いた『おでん』が、私は好きである。

玉に瑕なのは、大量に煮ること。「沢山炊いたほうが美味しいのよ！」と母は豪語する。それも分かるが、いつも食べきれない。（今夜は何を煮てもらおうか…）

それにしても、南瓜を見て、自分の食べたいものをイメージしただけで、それを描いてしまうとは、"食い気"ばかりの　私って…、　私って…、　私って…？？？