『 そう見えなくても　私はわたし　これはだいこん 』　2010年12月号

葉付きの大根をいただいた。描いてみたくなったが、いざっ、筆を持つと葉の形が捉えづらく進まない。青々とした葉と大根の白さをシンプルに色を重ねずに描き上げたのがこれ。大根に見えないかもしれない、と思ったが…、これは大根。

大根の葉は、さっと茹で、大ざっぱなみじん切りにし、削り節、ごま、生姜、ジャコを加え、塩や醤油で味付けし、白米にたっぷりまぶして食すのが好きだ。そこに、程よく半透明になった風呂吹きか、煮付けた大根があれば、身体も心も温まる。（厚向きした大根の皮のキンピラも乙だなあ…、ぬるめの燗に…）

「肌が白いね」などと以前はたまに言われ、嬉しかった、今は昔のこと。大根を見て思い出し、軽く、ため息一つ…。

「おぉーっ！　すね毛だ！毛が生えてきた！」と、感激したのは最近のこと。やけどの跡から、わずかに毛が生えていたのを見つけ、つい、声をあげてしまった。２か月前、カップラーメンを食べようと、麺だけでなく、足にも湯をかけてしまったのだ。弁慶の泣き所を中心に半径６〜７センチ。コメ粒程度のちょっとしたやけどなら経験があるが、ここまでのヤケドは初めてだった。しかも明後日は講演という時に・・・。みるみる皮膚がむけてスネ全体が真っ赤になった。「講演どうしよう？！」と思ったが、辛うじて演奏でき、講演に穴を開けずに済み胸をなでおろした。講演に行った小学校で『積極的ではない子が、風ちゃんの講演後、感動して泣いていました』とか『自ら握手をしに行きました』などと先生方から聞き、ヤケドしていても、講演できたことに改めて感謝。

結果、講演の合間のほとんどの日々をヤケドの治療に費やす羽目になった。病院での処置は消毒と薬の湿布とガーゼ交換、時間にして約１０分、されど、予約にも関わらず、待ち時間は１〜２時間、会計待ち数十分。通院の宿命か、と、ため息二つ三つ、あくびの四つ五つ・・・・・・。

２ヶ月たった今、真っ赤だった肌色はほんのりピンクになった。すね毛も増えつつある。これまでの人生で一度も「すね毛」に興味を持ったことなど無い。美人な皮膚科医師から「大丈夫よ、傷痕は残らないと思いますから」と言われても、すね毛のことまで考えていなかった。すね毛を見つけ、感激する自分に、さらに驚いた。

通院から解放されたころ、講演のピークも過ぎ、今年も沢山の子供たちと『足握手（あくしゅ）』をした。講演をキャンセルすることなく、色んな手と色んな足握手ができて、本当に嬉しく思った。

『風ちゃん、て、風ちゃん何だね』とある子に言われ、「私は、わたし」を再認識！
講演でお世話になった、大人の皆様、子供の皆様に心より感謝！
無駄毛と言うなかれ、大事な毛である。と、すね毛を見なおした、風子でした！