『 日々骨好日 』　2009年3月号

「うわーーーん！痛いよー」と朝目覚めた瞬間に泣き喚いた数日。いや、そんなに礼儀正しい泣き方ではなく、ぎぃやーだか、ぎょえーだか、何とも文字では書き表せない口から火を噴きそうなケタタマシイ泣き方。途切れることのない強烈な痛さで直ぐそこのトイレに行けない。便座にも座れず、母一人で私のトイレ介助が難しく、紙おむつを使ってみたがサイズが合わないのか、当て方が悪いのか、どうしても漏れて布団を汚す。ならばと尿瓶（なぜか我が家には尿瓶がある）を使用した。これは成功、しばらくはこれでいこう。激痛箇所はお尻なのだ。

１月１４日、ベッドから起きたとき不意に体がツッパリ足を滑らせ、落ちるように尻もちをついた。相手はフローリングの床であり、痛くないわけはない。翌々日に講演を控え、骨折していないことを祈りつつ夜明けを待ち、病院に直行した。レントゲンの結果「折れていないから打撲だね…」と診断された。腰から脚の付け根までお尻の全てがこんなに痛いのに、ただの打撲とは、少しホッとした。演奏には支障がなく２日後の講演を務めることができた。

あとは痛み止めを飲み、日をかけて治るのを待とう、時間が何よりの薬だろう。その後、数日経ち、１０日経ち、２週間…。打撲なら、わずかにも痛みが和らいできても良いはずだが、痛みは増すばかり。とうとう布団に横たわったまま身動きがとれなくなった。気づけば真夜中に痛さの余り自分の泣き声で目覚める始末。再検査をと思うも一歩も動けない、座れないし立てない、まるで巨大な牛蒡になった気分だ。数日後、友に頼み、牛蒡と化したこの身を運んでもらい病院へ行った。医師は「その時は見つからなくても後から出てくることもあるから」と再度撮ったレントゲンに目を凝らした。しかし、レントゲン写真では分からず、ＭＲＩ撮影に臨んだが、もともとの障害の付随運動により失敗。関節部分の骨折は関節がずれると二度と歩けなくなる可能性がある、そうなる前に「ずれないように手術しちゃう？」と言った医師も判断付かず、もうしばらく様子を見ることに。（骨折か、ひび割れか？？？）

２週間後の２月１６日またレントゲンを撮った。骨にあまり変化がなかったが、左側の痛みは少し減った気がする。薄皮を剥ぐように…。徐々に座薬使用が減り、痛み止めを飲む回数が減り（酒の量は増え…〈冗談〉）３日に一度くらいだが朝起きた時に「お、ちょっと楽かな」と思うようになり、回復に向かっていることを感じる。今年の書き初めで「日々足好日」と（是を足に換えて）書いたが、今の私は『日々骨好日』だと思った。

レントゲンやＭＲＩの撮影の時、白衣の紳士が私を抱き上げ撮影台へ移動させる。紳士に抱き上げられるなど日頃なら喜ばしいことも、この時ばかりはお尻の痛さ故「寄るな！触るな！」と言いたい。痛みに反応し両手は、普段よりも更に突っ張り過剰な動きをし、台から車いすに移動させてもらうとき白衣の紳士を殴ってしまった。加えて白衣の胸ポケットに手が入ってしまい、ムナグラを掴んで離せない。一瞬ビックリしたようだった（いきなり胸元つかまれたら驚いて当然である）が「すみません」と言う私に『大丈夫ですよ』と答えた茶髪で今風な髪形の白衣の紳士。会計待ちの際その紳士とすれ違い目が合った、会釈する私に少し微笑んで会釈を返してくれた。さすが白衣の紳士である。（イケメンかな？　マスクしていて分からない）

けがをしてみて気づいたことがいくつもあった。痛くて動けない時に「動けないって辛いわね」と言う人がいたが、そうではない、動くことで起こ痛みが辛いのだ、途切れない痛みが辛いのだ。とか。どうにもできなく痛い時は大声で泣けばいい。痛みは軽減できずとも、心は一瞬ホッとする。などなど。

今回、友人に、多くの方に、母に、多大なご迷惑とご心配をおかけいたしました。
すみません。ごめんなさい。
殴らず、ムナグラつかまず、マスクを外せば良かったのにと
後悔しつつ完治にはもう少し時間がかかりそうな、風子でした！